富山水辺の映像祭

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2023優秀賞[プロフェッショナルコース]

地球の果実

氏名:小川 選、居住地:神奈川県、作品時間:3分49秒

2011.3.13に私は友人の祖父母の安否を直接確認する為に知人らと3人で神奈川から車で東北に向かいました。

茨城から道の様子が変わっていき、仙台駅近くまでくると戦場とはまさにこうゆうものなのかと思う程に街は崩れ落ち、
あちこちで火の手や煙が上がり、通りすがる人々の顔や衣類はすすや汚れで黒くなっていました。

宮城県の塩釜からは道路が水没していたため知人らとリュックを背負い目的地まで歩いて進むことになりました。
私は壊れた街や商店、家々を横目に何か申し訳ない気持ちになり、その瞬間を何も映像や写真など記録に残すことが出来ませんでした。

しかし10年以上過ぎても、あの東北の惨状は私の脳裏に、しっかりと焼きつき刻まれていて今でも度々蘇ります。
その時期に東北から神奈川に帰って直ぐ、私は今回応募しました映像の音源である"地球の果実"という歌をアコースティックギターで書きました。

それから時が経ち、宮城県へは何回か足を踏み入れたことがあったのですが、福島県の帰宅困難地域の現状がどうなってるかは知りませんでした。

あの時、記録に残せ無かった東北の惨劇を12年過ぎ去った今ですが、今一度映像に残し
"地球の果実"の音源にのせることに決め"命"がテーマである今回の富山映像大賞2023に応募させて頂きました。

"地球の果実"の歌詞は文字通り、命について歌った楽曲です。最後に歌詞を全文貼り付けておきます。
映像ですが、帰宅困難地域となっている福島県の三区域を軸に、未だ人が住めない惨状と
それでも楽園のように美しく育った草花や昆虫達の映像をピックアップし映像に組み込みました。

そして、命のサイクルと"命"そのものが膨大な記憶から成り立っていることをパズルのように、切り絵アートとして、
様々な映像からサンプリングしました。
生きとし生けるものの惨劇や歴史をずっと映しだし観てきた、壊れて見捨てられた
ブラウン管テレビにもう一度映しだすことで表現しました。

メッセージとして、"愛"について歌った、話した、アーティストや革命家の映像を挟んでいます。

長い文章になってしまいここまで読んで頂いた方、どうもありがとうございます。

最後に、映像の音源である"地球の果実"の歌詞を貼り付けておきます。



地球の果実 :

作詞 作曲 小川選 
編曲    中村強志

東京から奏でるこの音色を夜空にうち放とう

全ての言語であらわすことできない人のその思い

クジラ達が歌う音色もしくは風が囁くように

世界が言語を忘れるころには人などいないだろう

日差しは滴る滴のように心の底を潤すのさ

夕暮れに沈む暁 渡り鳥 海の波 
木々のざわめき

自然を愛することすら自然にできない者達は

心の底では分かることすらも触れずに暮らすものは

壊れゆく日本の空を見ながら今なに思うのか?

近づくたびに遠くなるものなどこの際捨てちまうのさ

遺伝子に刻む破壊と創造繰り返したこのリズムが
大地に広がる乾期のように心の底を乾かすのか

命そのものが僕らの答えと認めることさえできたら

その時言葉はなんの意味もなく青い空が広がるのさ

言葉より先に君を抱きしめれば良かった



宇宙の僕らパズルで 誰もが失われたピース か細く脈打つ僕を  kill me kill me
地球の僕は果実で心は鮮やか木に      優しい君の手でほら kill me kill me



降り注ぐ日差しの中で僕らは歩みを止めた
春の風が爽やかな東京